ライトノベルの装丁から雑誌やアニメなどのロゴデザインなど幅広い分野で活躍されている團夢見さんに、ご自身のデザインや経営者としての心持ちについて語ってもらった。繊細なものからポップなものまで、その幅広いデザインはいったい彼女のどこから生まれているのだろうか。

— お仕事を始められたきっかけを教えてください

元々在学中にイラストレーターとして仕事をしていたんですが、卒業後にあるマンガ家さんのアシスタントをしてまして、その延長で伸童舎という会社に勉強に出されてそのままデザイナーになったのがきっかけですね。
(伸童舎は)1から教えてくれるというところではなくて、まず実践してみるという気風がありましたね。「とりあえず社内コンペに参加してみようか」みたいな。
学ぶみたいな感じですね。もちろん最低限ソフトの使い方などは教えてくれるんですけど、どちらかというと職人のような人が集まった会社でした。

— 伸童舎さんを経て独立されました。独立するにあたって不安なことはありましたか?

そんなになかったですね。そこまで考えていなかったというか、きっかけとしては本当に若い時の勢いみたいな。「自分の事務所、欲しいな」みたいな単純な憧れでしたね。
私のところは父が経理を担当してくれているのですが、とても信頼していて。その父が「(事務所を)構えても大丈夫だ」と言ってくれたので、安心して一歩を踏み出せたのが大きいですね。
あと(伸童舎の)社員としてだけでなく、外注としてもお仕事がいただけていたので、独立直前くらいには、8割くらいはクライアントさんから直接お仕事をいただいてました。独立は結構そのまますんなりと。ありがたかったですね。

— 経営者として心がけていることなどありますか。

仕事が詰まってくるとスタッフのストレスは気になりますね。「ちょっと疲れているかな」と感じたら、仕事から少し離れてリフレッシュしてもらうようにしています。ご飯を食べに出たりとかはよくありますね。

— 「image jack」という名前の由来を教えて下さい。

大学生の時に学園祭とかに出店する時に仲いい子とアクセサリーとか作って売ってたんですけどその サークル名が相方が決めた「art jack」っていう名前があってart jackにしようと思ったらその子がアカウントを取っていてアカウントが取れなくて似たような響きにしようって思ってアートとかデザインだしimageかなって。すんなり決まりましたね。

事務所内にある本棚。團さんのこれまでの作品が整頓されている

— 忙しいときに辛いと感じますか?

よくありますが、私がデザインに集中できるように立ち回ってくれる、アシスタント兼秘書にも近いスタッフがいるので心強いですね。いつもスムーズに編集さんの意見を見ながら作業に集中できるので、とても助かっています。

自分のデザインの強さが大事

— デザインする時に心がけていることはありますか?

スタッフにいつも言っているのは「何でもいいから自分のセールスポイントを持ちなさい」ということですね。やはりそれが明確にあると、同業者にも伝えやすいし、自分の中にルールとして存在するだけでデザインにも強さが出てくるかなと。例えばこれ(「ひとでなしの恋恋ロ」の装丁)だともう「柄と色でしょ!」みたいな。そういう特徴をひとつ持たせるようにしています。

ひとでなしの恋恋ロ(ZERO-SUMコミックス)/ぺぷ(著)

— お仕事のラインナップを拝見すると、ライトノベルなどの書籍のデザインが多い印象があったのですが、ご自身はどんな本を読まれますか?

私はどちらかというとゲームオタクなので、お仕事の資料として以外ではマンガやライトノベルの類は普段あまり読まないんです。

— お休みの日のリフレッシュの方法はありますか?

ゲームとお料理ですね。私の場合は素材が来たり探したりして、形を作って、仕上げてくれる印刷所に渡していく進め方なんですが、料理だと自分で全部完結できるので別の楽しみがあるんです。
なんだかんだ言っても見た目は大事、というところが料理とデザインには共通している気がして。やっぱり食べるなら美味しそうに見える方がいいですよね。装丁も綺麗だと手に取りたくなってしまう気がするんですよね。

キーカラーをうまく使って自分の武器にしていく

— 色が特徴的だなという印象があったのですが、色使いについてはどのように考えていますか?

とにかく派手な色使いが好きですね。蛍光ピンクとか。基本的にマンガだとCMYKに特色の5色が多いですね。人物の肌を綺麗に出すために蛍光ピンクを使うことが多いです。

— 元絵があってさらにデザインで色を乗せるのは難しそうだなと感じるのですが、たくさんの色を扱う際のコツのようなものはありますか?

キーカラーを決めてしまえば良いのでは、と思います。黒で締めるとか、徹底的に派手にするとかして振り切っちゃう。画面だけじゃなくて、店頭に並んだ時のことを考えることも重要ですね。店頭にあったら目立つだろうなって。

— メディアフォーマットによってデザインのやり方を変えている点はありますか?

小説 > マンガ > DVDの順でタイトルを目立たせる必要があります。例えば、小説は判型が小さいので読者に見せられる面積も小さい。だからタイトルをしっかり載せたいという編集者さんが多いですね。次にマンガは「ビジュアル最優先でいいよ」と言ってくれるところもあれば「ちゃんとデザインも見せたい」というところと両方あります。DVDの場合はタイトルの部分がすごく小さくて。「ノラガミ」だと帯にタイトルが乗るんですよ。なのでDVDは結構雰囲気重視でも大丈夫だったりしますね。タイトルの可読性は使い分けている人が多い印象です。BLだと雰囲気重視ですね。女性は雰囲気やフィーリングで買われる方が多いので。

— 10年後、ご自身のお仕事がどうなっているか、またどうなっていたいですか?

結構デザイナーの社長さんだと下を育てて自分は一線を退いたりするんですけど、私は今のままずっとデザインできてたらいいなあと。

— 私たちは今短大の2年生なのですが、その2年とかけてここ最近2年間のお仕事の中で一番思い入れのあるものは何ですか?

「ノラガミ」です。初めてアニメの2期をやれたので。2期をやるかどうかはデザイナーは関係ないんですけど、2期をやるほど人気な作品に関われたので嬉しいなって。あともう一つ雑誌が!ずっと昔から雑誌の表紙をやりたいと思ってたんですけど、最近雑誌のロゴとか表紙をできるようになって嬉しいですね。

TVアニメ「ノラガミ」ロゴ

少年マガジンエッジ ロゴ

— 團さんがインスピレーションを受けるものを教えてください。

ゲームや本など日常の中で目に入るもの全部がヒントかなあと思いますね。

— 最後にインタビューを読んでいるデザイナーになりたい学生にメッセージをお願いします。

本当によく言われていることだと思うんですけどいろんな体験をしていろいろ見ることが大事ですね。無駄になることは無いなと思います。私は声優さんのファンとかしていた時期もあったんですけど、そしたら声優業界のいろんなものを見るわけですし。無駄な趣味は無い気がします。突き詰めれば、ゲームとかやっていてもロゴが素敵とか、いつも注意して見ていれば。電車の中の吊り広告だって全部デザインされているものなので全部勉強になるかなと思います。